2020年流行!3大Web会議システム徹底比較

近藤 全代

2020年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に直面する世界において、政府の外出禁止令に従うべく在宅勤務を余儀なくされている。先の見えない状況の中、リモートワークでもプロジェクトや事業がスムーズに遂行出来る強い事業基盤作りが求められる。

ISI Dentsu of America, Inc.(ISID)では新型コロナウイルス以前よりリモートワークを中心とした柔軟性の高い業務実現のため、G Suiteを事業プラットフォームとし、クラウドソリューションを活用した事業デジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる。本ブログでは、それらクラウドベースの業務システム群のなかで、特に社内外におけるコミュニケーシの要となるWeb会議システムについて、筆者が特に注目する3システム(Zoom, Cisco WebEX, Google Meet)を2020年4月30日現在の最新情報を交え紹介していく。

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【目次】

  1. Web会議とは?

  2. 3つのWeb会議システムを徹底分析

    ・Zoomの概要と特徴

    ・Cisco WebExの概要と特徴

    ・Google Meetの概要と特徴

  3. 新型コロナウイルス感染症の流行拡大への各社対応

  4. 3つのWeb会議システムの比較表

  5. Web会議システムの選び方を利用シーン、機能性、価格、セキュリティの4つの項目で比較

  6. まとめ


Web会議システムとは?

今までの日本では対面での打合せが主流であったが、働き方改革の施策として在宅勤務の需要は高まり、Web会議システムを導入する企業が増えている。Web会議を活用することで、遠隔地点の相手と音声通信やビデオ通信によるコミュニケーションが実現し、海外や離れた地方支社、取引先との打ち合わせが可能となる。Web会議システムとは、”いつでも、どこでも、どんな端末からでも複数人での同時参加が可能な Web会議を実現するクラウドサービス”の総称である。


3つのWeb会議システムを徹底比較・分析

数多くあるWeb会議システムの中からどのサービスを選べばよいかわからないという疑問を解決すべく、実際にアメリカで人気の3つのWeb会議システムを分析していく。

Zoom

世界で75万人以上が利用するZoom Video Communications社が提供するWeb会議システム。コロナウイルス感染症拡大にあたりダウンロード数が伸び、昨年末は1日当たり1000万人前後であった利用者数が、2020年3月には2億人ほどまで急増している。無料版でも幅広い機能を取り揃え、利便性の高いシステムである。

【特徴】

  • 無料版でも録画・録音が可能

  • ビデオ会議は最大100人まで同時参加可能

  • Zoomのユニーク機能

    • ブレークアウトルーム

      複数人でのWeb会議中に、参加者をグループに分け、それぞれ話し合いができる機能。セミナー時にグループワークを実施する、打合せ中に各チーム毎に協議がしたい等様々なニーズに対応する。最大50個のブレークアウトルームを作成可能だ。

    • バーチャル背景

      ビデオ背景をカスタマイズ出来る機能。生活感が漂う部屋を隠す、面白い背景を設定して会議に遊び心を追加する等よりクリエイティブにウェブ会議利用できる。

Cisco Webex

1億人以上が利用する世界シェア首位のWEB会議システム。Web会議以外にも、ウェビナー、オンライントレーニング、リモートサービスなどでも利用でき使用用途は幅広い。シーン別に活用出来る豊富な機能を兼ね備えている点はビジネスシーンでアドバンテージがある。

【特徴】

  • 4万人以上に配信可能なライブブロードキャストや、大規模なWebセミナーも実施可能。

  • バラエティに富んだ機能を取り揃える有料版はZoomより安価な$13.50。(Zoom Pro $14.99)

  • 会議中に参加者のPCを操作できる機能有り。共有しているソフトウェアの操作の権限を参加者に付与する機能があり、IT部門がリモートで社員PCのトラブル対応する際に活用出来る。

  • 音声コマンド統合機能。Google Assistant、Siri、音声コマンドで Webex の会議を制御。Toyota SmartDeviceLink では自動車のダッシュボードで会議への参加を実現する。

Google Meet

Googleは2020年4月7日に、G suiteが提供するビジネス向けのWeb会議サービスとして「Hangouts Meet」から「Google Meet」へ名称を変更した。G suiteのカレンダーやメール等各ソリューションとのスムーズな連携でリアルタイムコミュニケーションを支援する。

【特徴】

  • Googleならではのシンプルなプラットフォームは分かり易く使いやすい。

  • サポートするWebブラウザはChrome ブラウザ、Mozilla® Firefox、Microsoft® Edge、Apple Safariに限定されており、Internet Explorer を使用する場合は、Meet のプラグインをインストールする必要が有る。

  • Googleカレンダーとの連携が有用。Googleカレンダーでミーティングをスケジュールすると自動的にGoogle Meetのリンクとダイアルインナンバーが発行され、ミーティングの招待メールにGoogle Meet情報も含まれた形で送付できる。ミーティング参加時もGoogleカレンダーからURLをワンクリックでGoogle Meet へ簡単に参加可能。

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新型コロナウイルス感染症の流行拡大への各社対応

Zoom

サポートページを開設し、Zoomの利用方法やリモートワークに関するウェビナーやオンライントレーニングを無償で提供。また、遠隔医療に関するウェビナーやブログで、医師や専門家である医療のプロがZoomを使用し遠隔で患者の診察や治療を行う方法を紹介している。

Cisco Webex

期間限定特典とし、2020年7月1日まで「90日間無償支援プログラム」によるWeb会議システム無料版の機能拡大と3つのセキュリティ技術を無償で提供する。こちらを利用するためには申請が必要となる。

【特典内容】

  • 無償アップグレード機能

    開催回数・時間制限無し、1会議あたり最大1000名まで参加可能、資料共有機能、会議録画機能等

  • 下記3つのセキュリティ技術

    • Cisco Umbrella

      VPNを使わないリモートワークへの対応システム。マルウェア、C2コールバック、フィッシングのブロックや予測型インテリジェンスで外部からの攻撃を回避しユーザーを保護する。

    • Duo Security

      ユーザの ID を検証し、アプリケーションへのアクセスを許可する前にデバイスの信頼性を確立する。

    • Cisco AnyConnect

      VPNで普段の業務環境に簡単にアクセス。セキュリティチームは、自社のインフラストラクチャにアクセスしているユーザとデバイスの確認や制御を簡単に行える。

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Google Meet

期間限定特典とし、2020年9月30日まで全G Suite利用者に以下の高度な機能を無償提供する。通常、これらはG suite Enterprise, G suite Enterprise for Educationでのみ利用出来る機能となる。

【特典内容】

  • 最大で 250 人が参加できる大規模会議の開催

  • ドメイン内で最大 10 万人が視聴できるライブ ストリーミング

  • 会議の録画と Google ドライブへの保存


各ソリューションの比較表

3つのWeb会議システム機能を比較。各システム、特徴的な機能は赤字で色付けしており、本ブログで詳細を紹介している。


4項目からみるWeb会議システムの選び方

1 . 利用シーン

ビジネスから、教育機関での授業、教会の礼拝、また友人間でのオンライン飲み会、Yoga受講まで幅広いシーンでWeb会議システムが活用され始めている。

  • バラエティに富んだシーンで活用できるのはZoom。無料版でも1番充実した機能性を誇り、ビジネス、プライベート用途関わらず簡単に使いこなせる。

  • Google Meetは大規模会議に最適である。最大250人同時参加可能な会議と、10万人へのライブストリーミングは他のシステムと段違いの機能性。


2 . 機能性

3つのWeb会議システムに共通する特徴として、それぞれのアカウントを保持していなくても、ホストから送られたURLをクリックすれば会議に参加出来る点は利便性が高いが、その中でも各システムのユニークな特徴を見ていく。

Zoom

バーチャル背景機能、ブレークアウトルーム以外にも、参加者49人までが一画面に同時表示出来るグリッド表示は他社の最大表示数25人と比較しても圧倒的に多く有用である。

Cisco Webex

Q&A、投票機能を無料版でも使用可能なのはWebEXのみ。ウェビナーや大型ミーティング時に、決議事項や質問事項へ投票や回答が出来る利点がある。

Google Meet

品質管理ツールで会議の分析を徹底。管理者は打合せ、参加者、デバイスの統計情報を分析し、会議で生じた問題をリアルタイムにトラブルシューティングし根本原因を特定する事が出来る。

【管理内容】

ミーティング指標、ミーティングの検索やデバッグ、ネットワーク統計情報(ジッター、パケットロス、輻輳)、システム(CPU)の統計情報。


3 . 価格

無料版、有料版の有無や月々にかかるコストは選定のポイントになる。

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4 . セキュリティ

Web会議では、通常の会議と同様に秘密情報、顧客情報などがやり取りされることがあり、その取り扱いには細心の注意が必要となる。Zoomは多くのセキュリティ問題への批判に対し、最高経営責任者(CEO)Eric Yuan氏が2020年4月1日、90日間、新機能の開発を停止し、セキュリティの問題への対処に注力する計画を発表するほどセキュリティはWeb会議システムの重要な項目となっている。

Web会議システムを利用するにあたり、特に押さえておきたいセキュリティリスクは2つある。

不正アクセス

招待を受けていない第三者の不正アクセスが多発。主催者から送られてきたURLをワンクリックでWeb会議に参加出来るという手軽さが、セキュリティ面では裏目にでている。Zoomでは不正アクセスによる荒し行為(Zoombombing)が発生し、秩序に反する内容の画像や、人種差別発言をチャットにアップデートする問題が報告されている。

【対策】

  • パスワードの設定

    会議参加時にパスワードの入力を要求する。Zoom, Cisco WebexではWeb会議主催者が、パスワード入力の有無をスケジュール作成時に設定できる。Google Meetは基本的に招待した人のみが会議に出席する仕組みのため、パスワードは不要との思想があり、パスワード入力設定はできない。

  • 追い出し機能

    全3システムともに主催者は、不正アクセス者や会議中に好ましくない態度の者を会議から削除・追い出す機能を全3つのWeb会議機能では備えている。

  • ロック機能

    退室させた参加者がミーティングに再び参加するのを防止する。ミーティングをロックし、現在の出席者以外に誰も参加できなくする。

情報漏洩

第三者による共有資料への不正アクセスや会議の盗み聞きが起こり、機密情報の流出の危険有り。

【対策】

  • 暗号化

    暗号化とは、音声や映像データを外部から読み取れない暗号に変換し、送信先で再び音声・映像データに復号する事である。Web会議内容を暗号化することにより第三者に内容を解析出来ないようになる。

    各3社異なる暗号化を提案しており、概要を紹介していく。

    Zoom

    ネットワークへの接続をTransport Layer Security(TLS) 1.2で、また共有コンテンツの暗号化をAdvanced Encryption Standard(AES)256-bitを使用し暗号化している。2020年5月30日に有効化が予定されているZoom 5.0では、認証付き暗号化AES 256-bit GCMをサポートし、Web会議の通信データを保護し、改ざんを防ぐ耐性を強化していく。この暗号化を使用する条件とし、全ての参加者がZoom 5.0にアップデートしている必要がある。

    Cisco Webex

    Zoomと同様TLS1.2とAES256-bitを使用し通信する映像や音声、データはすべて暗号化されている上、より高いレベルのセキュリティが必要な業務の場合、エンドツーエンドの暗号化も使用可能だ。エンドツーエンドの暗号化とは、Web通話のデータが転送中に常に暗号化され、データをやり取りする自分と相手の端末以外ではデータにアクセスできず、たとえサービス提供者(Cisco社)であってもアクセスできない。

    Google Meet

    IETF のセキュリティ標準である Datagram Transport Layer Security(DTLS)と Secure Real-time Transport Protocol(SRTP)に準拠し、各参加者、各会議に対して一意の暗号鍵を生成する。この暗号鍵は会議が終了するまで有効で、ディスクに保存されることなく、会議のセットアップ中に暗号化および保護された RPC(リモート プロシージャ コール)で送信される。


まとめ

数あるWeb会議システムの中からどのシステムを選択するかは、ユーザーの利用シーン、使用用途や予算によって大きく異なる。世界で16.9億のユーザー数を誇る巨大SNSツールのFacebookは、2020年4月24日にWeb会議システムの提供を発表し、Web会議システムの市場は激化している。

ISIDとして、3社のWeb会議システムを比較分析した結果、最有力ソリューションはGoogle Meetと考える。Google Meetは、スタイリッシュかつシンプルなシステム構造でユーザビリティが高く、容易な操作を実現する。それと同時に、豊富な機能、安全なセキュリティ環境は、さすがのGoogleと言えるほど拡充した内容であり、信頼出来るソリューションである。Google MeetはG Suiteの一つのコンポーネントとして提供される機能となり、Google Meet単体での使用やアカウントの取得は出来ないが、1ホスト月額$6から、普段使い慣れたGoogleメール、カレンダー、ファイル保存・共有が可能なドライブまで使用出来るとなると非常に費用対効果が高いソリューションであると考える。何より、Googleが提供する安定的かつシームレスなビジネスプラットフォームで、リアルタイムでのコミュニケーションを実現し弊社のビジネス生産性は大幅に向上している。

ISIDでは、システム開発、コンサルテーションからアメリカのテック市場のリサーチ業務まで幅広い業務を担い、日系企業の事業拡大に貢献する事を任務として活動している。ホームページ内のブログより、今後もISIDが推進するデジタルトランスフォーメーションやアメリカのトレンドを紹介していく予定だ。現在逼迫した状況化で私たちの働き方は劇的に変化し、Web会議システムを効果的に利用する重要性は高まっている。この先もWeb会議システムの更なる機能の拡張と利便性向上に期待すると共に、本ブログが皆様のWeb会議システムの選定に微力ながら役立つ事を願う。


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